書評:神道入門 民族伝承学から日本文化を読む

【書名】神道入門 民族伝承学から日本文化を読む【著者】新谷尚紀【発行】筑摩書房(ちくま新書)【評価】C【評者】Vincent A.【書評】残念ながら本書も神道の入門書としては落第です。「本書も」というのは,直近にレビューした「神道入門 日本人にとって神とは何か」(平凡社新書:井上順孝著)と同様に,という意です。本書は古神道の時代から国家神道の時代までの神道の歴史を網羅的に扱っており,「神道の歴史」というタイトルであれば評価は違っていたでしょう。神道入門書として評価が低い理由は,井上順孝著「神道入門」と同様で,神・神々に関する記述がきわめて乏しいことです。神は神道の中心であり,神の存在なくして神道は成り立たないのですから,その神を抜きに神道の本質を語るのはそもそも無理なのです。本書は歴史上の事実を時系列的に並べた歴史書なのです。しかし歴史を事細かに記しただけでは,神道において神とはどのような存在であるのか,私たちは神をどうとらえるべきか,神・神々と人々はどのような関係であり続けてきたのかなどを理解することは難しいでしょう。井上順孝著「神道入門」のレビューでも記しましたが,例えばキリスト教の入門書に神,キリスト,創造主などが具体的に説明されていないとすれば,その書を読んでもキリスト教の本質がわかるはずがありません。本書を読んで,井上順孝著「神道入門」と同様の不満を感じます。【Tags】神道,新谷尚紀,古代神道,神身離脱,神宮寺,律令祭祀,御霊信仰,本地垂迹説,伊勢神道,卜部兼倶,唯一神道,儒家神道,吉田神道,平田篤胤,復古神道,国家神道,神社神道,神社本庁

書評:神道入門 日本人にとって神とは何か

【書名】神道入門 日本人にとって神とは何か【著者】井上順孝【発行】平凡社(平凡社新書)【評価】C【評者】Vincent A.【書評】厳しいようですが,本書は神道の入門書としては落第です。最大の理由は,神道の神・神々に関する記述があまりに貧弱なことです。本書には「日本人にとって神とは何か」という興味をそそられる副題が付されていますが,それは題目だけで,この点について本書中に明快に論じた記述はありません。宗教の入門書を著すとき,その宗教で崇められているなにがしかの神聖(神性)な存在そのものについて何も説明しないということは,普通は考えられません。例えば,キリスト教の入門書に神,キリスト,創造主などが具体的に説明されていないとすれば,その書を読んでいったいキリスト教のなにがわかるのでしょうか。(中略)本書は神道を宗教文化史的に論じた概説書で,本来は「神道の歴史──神社神道の拡大と文化習俗への浸透」などとすべき書です。神道の宗教文化史的側面に焦点をおき論ずることに意味がないのではありません。実際,宗教文化史の書としてみれば本書には興味深い事柄がいくつも述べられており,新書として一定の評価ができそうなのです。しかし,それにしても本書では神の存在があまりに希薄なのです。

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