書評:神道・儒教・仏教──江戸思想史のなかの三教

【書名】神道・儒教・仏教──江戸思想史のなかの三教 【著者】森 和也 【発行】筑摩書房(ちくま新書) 【評価】C 【書評】本書は索引を含めて450ページ近く,価格も1100円と新書としては値が張ります。これだけのボリュームの書を著すために著者が費やしたエネルギーには敬服しますが,しかし大変残念なことに,本書の「神道・儒教・仏教──江戸思想史のなかの三教」という書題はほとんど詐欺レベルです。筑摩書房編集者は原稿を本当に読んだのでしょうか? 私(評者)の好きなTVドラマに主人公が日本各地の飲食店を食べ歩くものがあり,あるとき,注文に迷った主人公が「メニューの先頭にある料理はその店の自信作」というような台詞を語るシーンがありましたが,本書の書題にある「神道・儒教・仏教」について,著者が自信をもっているか否かはともかくも,書題に三つ並んだ「神道・儒教・仏教」のまさにその先頭にある「神道」について,本書には実はほとんどなにも記されていないなどとは,普通は考えません。ところが,本書には神道については,実際,ほとんどなにも説明されていないのです。 【Tags】仏教,儒教,幕藩体制,寺院法度,徳川将軍家の仏教的神聖化,近世的政教分離,国学,文学,天竺増,キリスト教邪教観,ゴータマ・ブッダ,寺請制度

書評:宗教と日本人 葬式仏教からスピリチュアル文化まで

【書名】宗教と日本人 葬式仏教からスピリチュアル文化まで【著者】岡本亮輔【発行】中央公論社(中公新書)【評価】C【書評】著者は「まえがき」で,過半の日本人には信仰がない一方で,冠婚葬祭や寺社参拝など人々が宗教と触れる機会は多いとしたうえで,「本書の目的は,こうした宗教と日本人との複雑な関係を解きほぐすことにある。その戦略を一言で言えば,信仰と組織を中心とする宗教論からの脱却だ。宗教を心や内面の問題に限定せず,信仰・実践・所属の三要素に分解し,教団や教会としてまとまらない,個人を中心とする現象に注目するのである」と述べています。日本の宗教論に新たな視点を提示するという意味では本書は意欲的な著作なのかもしれませんが,残念ながら本書の全体的な印象は「どうも要領を得ない」というものです。「まえがき」を読む限りですが,著者の考え方のベースには“日本は特殊・特別です”論があるようで,日本における宗教と人間の関係は特殊・特別で,その関係は従来の宗教論では解きほぐせるものでなく,それゆえ自分は宗教を信仰・実践・所属の三要素に分解して考察するという手法を編み出した,ということでしょうか。しかし,宗教と人間の関係が複雑なのは日本に特有の特徴とは考えにくく,伝統的宗教が残る国々においては,程度の差はあるとしても,その傾向があるはずです。また各国の習俗には宗教儀式の色合いを帯びた冠婚葬祭が必ず含まれるでしょうから,人々が宗教と触れる機会も日本だけが卓越して多いわけではない,ともいえるはずです。そうだとすると,“日本は特殊だから宗教を信仰・実践・所属の三要素に分解して考察する必要がある”というロジックが成り立たないように思います。

書評:神社の起源と古代朝鮮

【書名】神社の起源と古代朝鮮【著者】岡谷公二【発行】平凡社(平凡社新書)【評価】B【書評】本書は,日本固有のものと思われがちな神道の少なくとも一部に,古代朝鮮半島で信奉されていた神々の系譜が脈々と生き続けていることを,著者が近江,敦賀,出雲など日本海沿岸地域に点在する,原始朝鮮とのつながりを今なお色濃く残す神社を訪ね歩くことで明らかにしようとした書です。本書の評価は分かれるところかと思います。本書を歴史紀行書,すなわち,各地の歴史的遺構を訪ね歩き,その風景と遺構にまつわる歴史を解説する書とみるのであれば,著者の独特の文体もあって読者から好評を受けることでしょう。しかし,本書を純粋に学問的興味から,すなわち,日本の神道に対する古代朝鮮の影響,より具体的には,古代朝鮮で信奉されていた神々と現在の日本の神社で祀られている神々との関係を知りたいがために本書を読む場合には,その歯切れのなさに不満を持つ読者が多いように思います。評者は後者,すなわち,純粋に学問的興味から本書を読みましたので,評価は高くありません。大きな理由は,本書は内容的にも,そして形式的にも,非常に読みにくいからです。まず内容について。本書の題目は『神社の起源と古代朝鮮』とされており,本書の趣旨は,日本の神信仰の草創・展開に古代朝鮮の神信仰が大きく──もしくは決定的に──影響したことを明らかにすることにあると考えるべきかと思います。単に“日本の神道には古代朝鮮の神信仰の影響がみられる”と説明するだけでは,本書の趣旨からすると不十分でしょう。例えば日本の神信仰と古代朝鮮の神信仰の宗教文化的類似性を挙げるだけでは,一方が他方を模倣した可能性を指摘するにすぎませんし,同様に,日本の各地に古代朝鮮半島からの渡来人たちが建立したと思われる渡来系神社が現存していることを挙げるだけでは,渡来人たちが彼ら自身のために神社を設立した事実を追認するだけのことです。いずれも本書の趣旨を満たすに至らないはずです。【Tags】神社の起源,古代朝鮮,岡谷公二,神道,近江,出石,敦賀,出雲,大和,朝鮮半島,慶州,済州,新羅,伽耶,高句麗,百済(くだら),渡来系,渡来人,天日槍(あめのひぼこ),白鬚神社,白山神社,宇佐八幡,出石神社,韓国神社,出雲国風土記,出雲国造(くにつくり)三輪信仰,素戔嗚尊(すさのおのみこと),辛国(からくに)

書評:神社が語る古代12氏族の正体

【書名】神社が語る古代12氏族の正体【著者】関 裕二【発行】祥伝社(祥伝社新書)【評価】C【書評】本書の評価は高くなく,レビューすべきか迷いましたが,著者がこれまで多くの書を著している歴史家・歴史作家であること,直近で私(評者)が古代の渡来氏族に関する新書のレビューをしたことから,古代氏族を扱う本書をレビューすることにしました。本書では,出雲国造家(いずもこくそうけ),物部氏,蘇我氏,三輪氏,尾張氏,倭(やまと)氏,中臣(なかとみ)氏,藤原氏,天皇家,大伴氏,阿倍氏,秦氏の12氏族が扱われており,各氏族の歴史を,彼らのいわゆる氏神(うじがみ)に相当する神社・祭神に言及しつつ説明しています。ただ,本書は全体として,氏族の歴史が主で,神社の歴史・祭神の由緒が従という関係で記述が進められています。各氏族にまつわる史実や謎については多彩な事柄が述べられているのですが,その一方で神社・祭神の扱いは軽く,あたかも氏族の歴史を語るときの切り口のような観を呈しています。本書タイトルには「神社が語る」とありますが,実際は神社が何を語っているのか,とてもわかりにくいのです。そうなってしまった理由は,大きくふたつ考えられます。【Tags】関裕二,古代氏族,神道,神社,氏神,出雲国造家,物部氏,蘇我氏,三輪氏,尾張氏,倭氏,中臣氏,藤原氏,天皇家,大伴氏,阿倍氏,秦氏,出雲大社,石上神宮,磐船神社,宗我坐宗我都比古神社,大神神社,熱田神宮,大和神社,枚岡神社,春日大社,伊勢神宮,伴林氏神社,降幡神社,敢国神社,伏見稲荷大社

書評:神道とは何か 神と仏の日本史

【書名】神道とは何か 神と仏の日本史【著者】伊藤 聡【発行】中央公論新社(中公新書)【評価】C【書評】直近で比較的新しい神道入門書2冊についてレビューしましたので,本書は少し前の発刊ですが,同様の書としてレビューすることにしました。神道の入門書には良書が少ないのですが,本書も残念な書の一冊です。その理由は少々複雑です。著者の基本的な考え方は,神道は古代より脈々と続く日本の民俗宗教と理解されることが多く,日本文化や日本人の精神性にまで深く溶け込んだものといわれることもあるが,私たちが目にする神道は古代の神信仰・神祇信仰とは大きく異なり,中世に仏教を初めとする大陸思想の影響を強く受けて思想らしきものを身につけることで,ようやく神道という宗教が生まれたというものです。そして本書では特に,神道(神祇信仰)に対する仏教の影響を詳しく述べています。この部分は初学者にも大いに参考になるところです。しかし,いくつかの点で本書には不満を感じます。第一に,本書には「神道とは何か」という題目が付され,神道とはどのような宗教なのかを解説した初学書のような体裁を取っていますが,実際は,本書には神道がどのような宗教であるのか,その内容を直裁かつ具体的に説明する記述が乏しく,代わりに,著者の関心はもっぱら神道という“観念”ないし“思想”がいつ,どのように成立したのかという神道思想の形成史に置かれています。著者の専門が日本思想史ですので,思想史に比重が置かれるのは無理からぬことかもしれませんが,その結果,本書は神道を紐解く入門書というよりも,『神道形成史概論』の書となっています。第二に,では神道形成史の入門書としての評価はどうかといえば,それも芳しくありません。著者は,中世に神仏習合などの影響で神信仰・神祇信仰に思想らしきものが芽生え,ようやく神道という宗教の体裁を整え始めたとする説──ここでは便宜上「中世成立説」と呼ぶことにします──に立ち,神道思想の形成と変遷を論じていますが,この中世成立説はなかなかのくせ者で,初学者には要注意の代物です。【Tags】神道,神道の成立,神道形成史,神道思想史,神信仰,神祇信仰,神仏習合,本地垂迹説,中世神道,近世神道,両部神道,伊勢神道,吉田神道,神観念,人神信仰,御霊信仰

書評:神道入門 民族伝承学から日本文化を読む

【書名】神道入門 民族伝承学から日本文化を読む【著者】新谷尚紀【発行】筑摩書房(ちくま新書)【評価】C【評者】Vincent A.【書評】残念ながら本書も神道の入門書としては落第です。「本書も」というのは,直近にレビューした「神道入門 日本人にとって神とは何か」(平凡社新書:井上順孝著)と同様に,という意です。本書は古神道の時代から国家神道の時代までの神道の歴史を網羅的に扱っており,「神道の歴史」というタイトルであれば評価は違っていたでしょう。神道入門書として評価が低い理由は,井上順孝著「神道入門」と同様で,神・神々に関する記述がきわめて乏しいことです。神は神道の中心であり,神の存在なくして神道は成り立たないのですから,その神を抜きに神道の本質を語るのはそもそも無理なのです。本書は歴史上の事実を時系列的に並べた歴史書なのです。しかし歴史を事細かに記しただけでは,神道において神とはどのような存在であるのか,私たちは神をどうとらえるべきか,神・神々と人々はどのような関係であり続けてきたのかなどを理解することは難しいでしょう。井上順孝著「神道入門」のレビューでも記しましたが,例えばキリスト教の入門書に神,キリスト,創造主などが具体的に説明されていないとすれば,その書を読んでもキリスト教の本質がわかるはずがありません。本書を読んで,井上順孝著「神道入門」と同様の不満を感じます。【Tags】神道,新谷尚紀,古代神道,神身離脱,神宮寺,律令祭祀,御霊信仰,本地垂迹説,伊勢神道,卜部兼倶,唯一神道,儒家神道,吉田神道,平田篤胤,復古神道,国家神道,神社神道,神社本庁

書評:神道入門 日本人にとって神とは何か

【書名】神道入門 日本人にとって神とは何か【著者】井上順孝【発行】平凡社(平凡社新書)【評価】C【評者】Vincent A.【書評】厳しいようですが,本書は神道の入門書としては落第です。最大の理由は,神道の神・神々に関する記述があまりに貧弱なことです。本書には「日本人にとって神とは何か」という興味をそそられる副題が付されていますが,それは題目だけで,この点について本書中に明快に論じた記述はありません。宗教の入門書を著すとき,その宗教で崇められているなにがしかの神聖(神性)な存在そのものについて何も説明しないということは,普通は考えられません。例えば,キリスト教の入門書に神,キリスト,創造主などが具体的に説明されていないとすれば,その書を読んでいったいキリスト教のなにがわかるのでしょうか。(中略)本書は神道を宗教文化史的に論じた概説書で,本来は「神道の歴史──神社神道の拡大と文化習俗への浸透」などとすべき書です。神道の宗教文化史的側面に焦点をおき論ずることに意味がないのではありません。実際,宗教文化史の書としてみれば本書には興味深い事柄がいくつも述べられており,新書として一定の評価ができそうなのです。しかし,それにしても本書では神の存在があまりに希薄なのです。

書評:神仏習合

【書名】神仏習合【著者】義江 彰夫【発行】岩波書店(岩波新書)【評価】A【書評】本書は時代と共に様相が進化する神仏習合とよばれる過程を,できる限り,その時代の社会構造ないし政治的・社会的状況との関係において論じようとしており,神仏習合の歴史にひとつの視点を提供する書となっています。特に,神が仏教に帰依したいと託宣を下し,それに呼応して地方豪族の手によって神社境内もしくはその近隣に神宮寺が建立される“神身離脱と神宮寺建立”という一連のシナリオが日本各地に広まる,いわゆる神仏習合の初期過程については,当時の政治的・社会的要因との関連で非常に分かりやすく説明されており,本書は良書といえるでしょう。(中途略)筆者はどうやら,神仏習合をもっぱら形式的な混交とみているようなのです。すなわち,神社で仏僧が読経をすればそれは神仏習合である,というように。確かにそれも神仏習合のひとつの側面とは思いますが,神仏習合はもう少し複雑なはずです。例えば,筆者も本書で最初に扱っている神宮寺ですが,その建立に貢献した仏僧を筆者は遊行僧とよんでいますが,この遊行僧とは修行僧,それも基本的には山岳修行僧のことです。山岳修行僧とは,奥深い山もしくは険しい山岳に入り仏道(特に呪術)の修行に励んだ仏僧のことですが,彼らがなぜ修行地として山を選んだかといえば,それは山が神祇信仰ないし山岳信仰の対象たる神々が住まわれる聖なる場所であり,そこで修行をすることで,彼らは神々の霊力を獲得しようとしたからに他なりません。すなわち,山岳修行僧自身が神仏習合を体現するモデルでもあったわけです。【Tags】義江彰夫,神仏習合,神宮寺,多度大神,巫女,託宣,神道,神祇信仰,基層信仰,仏教,雑密,大乗密教,普遍宗教,王権,怨霊信仰,ケガレ忌避,穢れ,浄土信仰,本地垂迹説,反本地垂迹説,中世日本紀

書評:国家神道と日本人

【書名】国家神道と日本人【著者】島薗 進【発行】岩波書店(岩波新書)【評価】B【書評】『国家神道と日本人』というタイトルは非常に魅力的です。しかし,実際のところ,本書にはタイトル後半の日本人に関する記述があまりありません。確かに国家神道は国の政策として推し進められた面が強いのですが,政治家や一部の宗教家のみの力でそれが達成された訳ではなく,少なくとも当時の日本人のなかに国家神道という制度ないし概念を受け入れる素地があったからこそ,結果の善し悪しは別として,日本国民のなかに広く,神道を民族がひとつにまとまるための精神的な拠り所として位置づけることができたはずです。【Tags】島薗進,国家神道,神社神道,皇室祭祀,天皇崇敬,明治維新,国体思想,祭政一致,神社本庁

書評:仏教と日本人

【書名】仏教と日本人【著者】阿満 利麿(あま としまろ)【発行】筑摩書房(ちくま新書)【評価】C【書評】「仏教と日本人」という本書のタイトルからすれば,本書は,仏教が日本人にどのような影響を与えてきたのか,あるいは日本人にとって仏教というのはどのような存在であるのかなど,仏教と日本人の関係性について論じているであろうと,おそらく読者はそう期待するのではないかと思うのですが,残念ならが本書はそのような書籍ではなく,単なる仏教雑学書に留まっています。本書を読めば仏教について底は浅いがそれなりに幅広い知識が得られるかもしれませんが,雑学は所詮雑学であって,真髄に迫るものではありません。実際,本書には仏教の真髄はほとんど述べられていません。本書のもうひとつの特徴は記述の仕方に仏教色が非常に強いことです。仏教について論じている書が仏教的なのは当然と思われるかもしれませんが,そういうことではなく,仏教について論じている著者の思考プロセスそのものが著しく“仏教的”なのです。【Tags】阿満利麿,仏教,宗教,仏,神,地蔵,塞の神,地獄,極楽,僧侶,葬式仏教,合理性,論理性

書評:仏教の常識がわかる小事典

【書名】仏教の常識がわかる小事典【著者】松濤 弘道(まつなみ こうどう)【発行】PHP研究所(PHP新書)【評価】<<評価不能>>【書評】評価欄に「評価不能」と記したのは,最低評価レベルに達していないという意です。そのような書をなぜここで論ずるのかというと,著者がハーバード大学大学院卒,マスターオブアーツ,浄土宗住職,上野学園大学教授,世界仏教大学理事,全日本仏教会国際委員長という立派な経歴の持ち主だからです。それほどの経歴を持ちながら仏教についてこの程度の内容の本を世に出すのかという驚きがあります。本書の水準は小事典というよりも観光案内書のレベルです。本書に『仏教の常識』は書かれていないし,それが分かるような内容ではありません。【Tags】松濤弘道,仏教,常識,宗派

書評:日本の神々

【書名】日本の神々【著者】谷川 健一【発行】岩波書店(岩波新書)【評価】A【書評】本書は間違いなく良書です。しかし,本書のタイトルにはやや納得がいきません。本書は単に日本各地の神々の特徴やその逸話について述べたものではないからです。新書本のタイトルには,編集者の意向がはたらくのか,内容を正しく表さないものが多く,結果として「新書文化」全体の価値をおとしめているのは残念です。本書のねらいは「日本の神々の原型の素描」(あとがき冒頭)にあります。すなわち,国家神道や一部の神社神道のように,人間の欲望,虚栄心,猜疑心,コンプレックス,不安,恐怖,ねたみ,憎悪など,仏法的にいえばまさに人間の愚かしい煩悩に神々が翻弄される前の,原初の神々の姿を求めて,筆者が40年もの歳月をかけて各地の小さな神社を訪ね歩いた旅をまとめたのが本書です。したがって,本書にはせめて『日本の神々──原初の神々の姿をもとめて』のようにサブタイトルを付すべきだったように思います。【Tags】谷川健一,神,神霊,神々の原型,原初の神々,神道,神社,寓話,神話,御霊信仰,祖神祭,神女,オナリ神,祭の観光化

書評:仏教,本当の教え:インド,中国,日本の理解と誤解

【書名】仏教,本当の教え:インド,中国,日本の理解と誤解【著者】植木 雅俊【発行】中央公論新社(中公新書)【評価】B【書評】本書は良書の部類に属する書なのだと思います。ただ,惜しむらくは構成がうまくなく,『本当の教え』というタイトルの割には本文中で仏教の『本当の教え』がさほど深く論じられていません。確かにサンスクリット語による原始仏典と漢語訳仏典の齟齬や,漢訳仏典をとおしての日本での仏教理解の誤りなどについて記述されていますが,それらはどちらかといえば散発的・断片的な説明に終わり,悪くいえば「あら捜し」のような印象すら受けてしまいます。それはともかく,本書を読んで改めて感じることは,日本のいにしえの仏教僧侶たちが犯した罪の大きさです。【Tags】植木雅俊,仏教,インド仏教,原始仏教,仏教受容,仏典,誤解,サンスクリット語,漢語,漢訳

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